Dec 7 1971
1971.12.7
山崎省三様
12月ともなれば、東京も もうかなり寒い事と思います。今年のニューヨークは雨ばかり、雨が降ると言ふ事は暖かなのでしょう。
僕の新しいスタジオは、今年始めて、スチームを通しましたので、なかなか調子が出ず、こゝ二三日 やっと具合が良くなったところです。
ニューヨークで今シーズンはやっている「リヤリズム」、まさに、くそリアリズムと言ふやつで、今、OK ハリスでやっている展覧会は、男と女が素裸で向い合っていると言ったたぐいの作品が、実物の人間とほとんど区別がつかないような出来。14、5才?ぐらいの女の子が2人裸で、床に足を投げ出している作品などは、なんとも変な感じ。日本だったら、警察がとんで来て、大変な事になるでしょう。近いうち、写眞をお送りしますが、雑誌に載せたりしたら、やはり、発禁となるのでしょうね。本人(作家)が作品と一緒に裸になって会場に坐っていて、見に来た人が、作品と間違えたと言った バカバカしい本当の話。
先日 針生さんより手紙があり、僕が芸新へ送った写眞を貸していたゞけたら、お借りしたいのだが、芸新へその様手紙を書いてみてもらえないだろうかとの事でした。
講談社の本の針生さんの分、”Art as Action”のためなのですが、芸新に この本に使えるスライドは、たぶん送っていなかったのではないかと思います。白黒は、ワールドスナップのために、まあ、ニューヨークにおける10年間の主だった展覧会は、ほとんど送ってあると思いますので、或いは、その中に使える写眞があるかも知れません。(モリス、アンドレの個展など)、一応僕の手元にあるネガも見てみますが、そう言うわけで 山崎さんより、針生さんへ、それらの写眞をお貸しすると言ふ事が出来ますのでしたら、その様にお願い出来ませんでしょうか?
行為の作品と言ふのは、後、作品が無くなってしまいますので、とりなおしが、きゝません。又、写眞を後で捜すのが大変です。今日、キャステリとウェバー(もとのドワン)ギャラリーへ行って見ましたが、意外なほど写眞がありませんでした。
写眞の件、もし、そのようにお計い願えるようでしたら 針生さんと御連絡いたゞければ幸です。
かってなお願事で申訳ありませんが よろしくお願いいたします。
この秋は、峯村さん、三木多門さんがニューヨークへ見え にぎやかでした。峯村さんは、ニューヨークでだいぶ勢力的に廻っていたようでしたが、毎日をやめて、これからフリーランサーで大変ですね。
ぼやぼやしているうちに今年も終りが近ずき落着きません。日本でのクリスマスとは、なにか夢があったように思えましたが、こちらのクリスマス前と言ふのは、一番、殺伐とする時かも知れません。
では寒さの折、くれぐれもご自愛下さいませ。
近藤竜男