12月23日(1971年)

1971.12.23

山崎省三様
 ご無沙汰いたしております。
 チェンバレン、ネオリアリズムに関するもの、福井さん中川さんの個展、の原稿をお送りいたします。ホイットニー アニュアルは25日からですので、2月に変る他の美術館の展覧会と共に来月お送りいたします。福井君は今までより より簡潔な画面を作っています。中川君の場合は、やはり具象ブームに乗って出て来たとも言えましょう。画廊が作家の力を認めていても、商品として成立たない(ブームにのらない)と思われるうちは、なかなか、展覧会を与へないものです。最初のチャンスを逆手にとって 画廊を引張る程に自分のペースを作ってしまへば良いのですが、そうでないと今度は画廊に振廻されます。福井君も中川君も自分の作品に大変な自信を持っていますので、その点、うまくやって行くのではないかと思います。
 ニューヨークは作家層が厚いから、作られたブームであっても それに副った仕事を長年やっている作家が必らずいるもので、2、3人は 良い作家が残ります。
 クリスマスシーズンに前衛作家を当てた画廊が多く、(どうせ小品展をやっても賣れないからか?) 1月に入ってからもそのまゝ かなり活発な動きが見られます。ダウンタウンの画廊が、どうやら、(画廊より作家が?)そのスペースを十分活用した発表を見せるようになり、興味がもたれます。メルツ、ビト アコンシー、ブルース ナウマン、テリー フォックスなど、しかし、一番面白いのが、ヨーロッパ系のソナバンド ギャラリーだと思えるのも少々皮肉です。もっとも Miss ソナバンドは Mr.キャステリイの前婦人ですが。
 芸新1月号のワールドトピック、ちょっと誤りがひどいのでお知らせいたします。掲載写眞、「ラウシェンバーク新作展」となっているのは、お送りいたしました原稿にも書きましたように フラー(Buckminster Fuller)のDymaxion Airocean World Projectionをベースとして、ジャスパー ジョーンズが1971年に作りました新作”Map”で、15×30フィートの大きさは、発表する壁がなかなか無く、会員のためのFounders Roomに掛けられました。同じ時期にローシェンバーグのダンボールによる個展が レオ キャステリイであり、ジャスパーの今までの仕事の總󠄂体と言えるようなこの「Map」と ローシェンバーグのソフィスティケイトな個展作品とが、対象的でした。又、レオ キャステリイがオー キャステリイになっていますが、僕の原稿の間違へかな? ローシェンバーグ個展の写眞はお送りしてありませんが、一応同封いたします。もしこの写眞をご使用になる事がありましたら間違いないよう、——掲載写眞が、ジャスパーの「マップ」、今日 お送りいたしますのがローシェンバーグの71年、ダウンタウン キャステリイ ギャラリーでの個展作品です。
 ジャニスでのSharp-Focus Realism展は、いさゝか馬鹿馬鹿しいのですが、この中ではやゝ異端のMendelなどが ごく最近良い仕事になって来ました。しかし、どんな具象作家が現在、注目されているかを知るには、大変便利な展覧会ですので、カタログ及び、僕のとりました写眞を別送でお送りいたします。
 では又、お手紙いたします。

手紙, 12月23日(1971年), 1971.12.23手紙, 12月23日(1971年), 1971.12.23手紙, 12月23日(1971年), 1971.12.23
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