Aug 25 1973

山崎省三様
　長いこと御無沙汰してしまい、どうもすみません。
　素晴らしかった蓼科高原での自然とのとけあいも、あっと言ふまに過ぎてしまい、今は毎日、「東京での生活」の出発以前 の段階で もたもたと停滞している次第です。
　長野では、本当に色々と有難うございました。ワラビは奥様から教わった方法でおしたしにしましたが、僕の家で作ったのと、女房の家で作ったのは(当時 それぞれの実家に住んでいましたので)かなり違った味のものになりました。奥様にすっかりお世話になりましたが、くれぐれもよろしくお伝へ下さいませ。
　今まで 二度の歸國は、旅行者の立場で過ごしてしまえたのでしょうが、まがりなりにも一年東京に住もうと思えば、ごくごく一般的な「生活」の底辺から出なおさなければならず、日常細事にかゝわれば、かゝわるほど、わからない事だらけで、改ためて東京を離れた年月の長さが身にしみます。
　ホイットニー ミユジアムでやっている、”The American Frontier: Images and Myths”展 僕の行った時は展覧会が始まったばかりで 何も資料がなく、会場写眞だけあります。
　ちょっと原稿にならないかも知れませんが、——　一応お送りして見ます。そちらに何かこの展覧会に関する資料がありましたら、書きくわえて下さい。
　金曜に会社へ電話しましたがちょうど休暇中との事でした。火曜日頃 又 お電話いたします。今度は、アトリエに皆様でいらしていたゞきたく、お待ちしております。
　では近々、お会いいたしました時に。
近藤