12. 28. 1963

1963.12.28

山崎省三様
 大変、御無沙汰いたしました。
 先日、原稿料御送り下さいましたとの事、東京より連絡があり、有難うございました。その後、フランシス ベーコンの展覧会の写眞をとりながら、御送りするのがおくれてしまい申訳ありません。又、今、ホイットニー ミユジアムで秀作展のやうなのをやっておりますが、まだ行くひまがありません。
 実は、大変急なのですが来年の2月4日より29日までニューヨークの日本橋ギャラリーで個展を開く事になりました。日本のギャラリーと言ふ事で+の面とーの面がありますが、場所が非常に良いのと壁面が廣い事が一番の魅力です。僕の作品は大きいので(だいたい8尺✕6尺ぐらい)廣いギャラリーが必要なのですが、そのようなギャラリーで個展を開くチャンスをみつける事はなかなか大変です。ちょうど、今度日本橋から話がありましたので思いきってやる事にいたしました。
 近い内に作品をギャラリーに入れなくてはならづ、今、作品をなおしたり、カタログの写眞を取ったりで大変忙がしく、他の事がみな中途半ぱになってしまいました。ちょっと、くわしく原稿を今書けませんので、恐れ入りますがそちらで作って下さいませ。同時にグッゲンハイムで開いているドロウイングの展覧会の写眞も一応同封いたします。ベーコンは、現在、世界的に良い具象作家が不毛な時だけに、大変注目されるべき作家だと思います。色々な問題をふくんでいる作家で、今ニューヨークでも大変話題になっています。50点の作品がそろうと良い面もわるい面もよくわかります。やはり今年のもっとも注目される展覧会でしょう。
 パップアートの後と言ふ事。具象の良い作家を欲求する心が皆にあると言ふ事。—— 作家に内的なものを欲求していると言ふ事。などがゝわりあって時期的にも大変注目されるべき展覧会だと思います。僕も色々と考へさせられましたが、ベーコンの作品をこれだけまとめて見るチャンスを得て良かったと思っています。
 先日、エミリー ロー コンペッションに出品し、受賞しました(10人)。賞金として750ドルくれ、大変びっくりしました。11月一杯、受賞者展をMadison Aveのギャラリーで開きました。その時の写眞が一枚ありますので同封します。又、今度の個展に出す作品の写眞2点を同封します故見て下さい。青の作品ばかりになりましたが、違ふ色の作品も出品します。色が少々くるっていますが、もう少し明るい青です。大きさは8尺✕6尺です。ごく最近の作品はだいぶ変りましたが、まだ本当に自分のものかわからない状態です。一度個展をやる事は、次の仕事への一段階にもなると思っています。あるいは個展後、作品が変る可能性もあるわけです。その事は又、今度書く事にいたします。エミリー ローの批評がヘラルドトリビュン、ジャーナルアメリカン等に出ておりましたので ヘラルドトリビュン同封いたします。
 では、又、御手紙いたします。乱筆乱文にて失礼いたしました。
近藤竜男

手紙, 12. 28. 1963, 1963.12.28手紙, 12. 28. 1963, 1963.12.28手紙, 12. 28. 1963, 1963.12.28

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