1月15日(1968年)

1968.1.15

山崎様
 年が明けて、あわたゞしく、68年が始まりました。2日からガタガタと働きだすこの國では、正月気分などは、まったくあじわえません。
 僕の展覧会、もう半分過ぎた頃と思いますが ご覧下さいました? 会場で見ると雰囲気が出ちゃって、アマイと言ふような事を言ってくれた人がいますが、多分そうだろうと思っています。なにか 気のつきました事がありましたら、お聞かせ下さいませ。
 作品を一点受取っていたゞけました? 山崎さんのお好きな作品がありましたでしょうか。
 ドローイングを数点 こちらで作りましたが 作品にしてみるかどうかはまだわかりません。(サトウへ出品したドローイング) 図面に近いのですが、立体になるものの図面ではなく、ぜったいに作る事の出来ない物の図面と言ったもの。平面上の「書く事」としてしか成立てないものである と言ふ事から、平面の意味のようなものが別に出て来るのではないか、などとも思ふのですが。
 この2月から、アルバイトを変ろうと思っています。 古美術をあつかう、アメリカの会社へ入る事になっていますが、そうなると今のスタジオを出なければならづ、別に新らしくさがさなければなりません。なんとなく しりの浮いた感じで落着きません。
 では又、お手紙いたします。今、ネーベルソンが個展をやっていますが、透明なプラスチックだけで出来たもので 自分では、全々作っていないようです。いわゆるプラスチック専門の工場で きれいに仕上げた物で、おそらく量産がきくのでしょう。
近藤竜男

手紙, 1月15日(1968年), 1968.1.15手紙, 1月15日(1968年), 1968.1.15
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