7月30日(1964年)

　今月分の原稿遅くなって申訳ありません。東京は今、郵便の遅配とか、間に合わないのではないかと心配です。
　今年の秋頃か、ミユジアム オブ モダンアートで大々的な日本展を、やるとか言ふ話を聞きましたが、——　東京では、そんな話ありますか? 瀬木さんが作品のセレクトをするようになるだろうとか言ふ話ですが。ミユジアム オブ モダンアートで日本の現代美術展が開かれると言ふのは大変良い事だと思っています。

　ニューヨークのホイットニー ミユジアムでは、ワールド フェアーに因み、6月24日より8月23日まで「BETWEEN THE FAIRS. 25 Years of American Art 1939-1964」と言ふ展覧会が開かれている。
　この前のニューヨークのワールド フェアーが1939-40であるから、それからちょうど1/4世紀。それは、1940年代、1950年代と言ふアメリカの作家達がヨーロッパの伝統えの抵抗から、独自のアメリカ現代美術をうち立てた輝かしい期間であり、1960年代はパップアートと、これ又、アメリカの生んだ新しい世界の年である。この1/4世紀はアメリカが世界の美術界の主導権をにぎるまでの歴史とも言えるわけである。
　ミユジアムでは、その間の主だった作家の作品141点を展示している。ベンシャーン、クニヨシ、等から、ゴーキー、ポロック、そしてローシェンバーク、ジャスパー ジョーンズや、パップアートのマリソル・エスコバル、ローゼンクイスト等と、アメリカの現代美術のあゆみが作品を見る事によって明瞭にわかる展覧会である。