9月1日(1964年)
1964.9.1
いつも原稿がおくれ遅れになってしまい申訳ありません。
この前の原稿の中で、ワールド フェアーの作家に関する件、ポップアートの作家の中のインディアーナを忘れていました。
又、ミユジアム モダンアートの「アイ レスポンシブル」は、あるいはハードエッヂ等の作家も含まれるかもわかりませんが、なにしろ始まって見なければわかりません。今までに、ミユジアムでえらんだ作品は、チラチラ派の作品が多いようですが、—— これは國際展の形ちをとるので、日本へも作品をセレクトしに行っていませんか? 日本でこの範ちゅうに入るのは、オノザトさんぐらいですか? 日本人では本当の意味で、この系譜に入る作家はほとんどいないのではないかと思います。若い作家でニューヨークにいる日本人には、そのような仕事をしている人もいますし、今度の事でミユジアムがピックアップする可能性もあるようです。
僕も大変作品が変りました。本来作品の変る事を僕自身は好まないのですが、それにもかゝわらづ、又、人一倍変るようです。この前の個展で、今までのものを出してしまった事が、一つの、新しいスタートともなったわけです。この事は又、今度の御手紙にでも書きます。
[ 自作のスケッチ2点あり ]
こんな作品で、まん中の所と両脇のキャンバスと3つにわかれています。眞中の長い所が又、それぞれ4ツとか5ツとか——独立した小さな絵が、つないであります。今度スライドでもお送りします。
ワールド フェアー
あのバカに廣いワールド フェアーの中にもいくつかの美術作品と呼んで良いものが点在しているが、ジャパン パビリオンの流政之の仕事。ニューヨーク パビリオンの壁に掛けられたアメリカンアーティストの作品などが、一応関心の持てるものである。遊園地的な建物の多い中でジャパン パビリオンは、その仕事にきめのこまかい眞面目さが感じられる。一方、ニューヨーク パビリオンの一角の壁面には、アメリカンアートの作品、—— ローシェンバーグを始めパップアートよりリヒテンシュテイン、ローゼンクイスト、アゴスティーニ、インディアーナ。ハードエッジより、リーバーマンとケリー。アッサンブラシより、チェンバレン、マレリー等の9作家の作品が展示されている。屋外に掛けられたこれらの作品は、あるものは壁面レリーフとして、又或るものはまるで廣告のような、それぞれに一見不似合なワールド フェアーの雰囲気と不思議なコントラストを作り出している。
グッゲンハイム
グッゲンハイム ミユジアムでは「ゴッホ展」にひきつゞき「ゴッホと表現主義展」が7月1日より9月の13日まで開かれている。前廻とは違うゴッホの作品を始め、表現主義の作家ムンク、ルオー、カンヂンスキー、ココシュカ、ノルディ、スーティン等。又それにつぐものとして、アメリカの抽象表現主義の作家ポロック、デクーニン、クライン、ブルックス、ガストン等の作品が展示されている。ゴッホに始まった表現主義が現在のアメリカ現代美術へと受けつがれて来たと言ふ一つの解釈にもとづいた展覧会である。