5月11日(1961年)
1961.5.11
山崎省三様
先日は、お忙しい所を、お会下さいまして有難うございました。
二日ばかりアリゾナのチューソンにより、四日の早朝、無事ニューヨークへ着きました。チューソンにある、アリゾナ大学の美術館に 桂ゆき子さんと、かねみつ まつみ さんの作品がありました。一応寫眞はとりましたが、コレクションの内容があまり良くわかりませんでした。
川端先生の個展が、急に早くなり、15のベティー パーソン ギャラリーで五月の二十二日よりときまりました。二十二日のオープニングの寫眞、及び案内状は、出来しだい御送りいたします。
二三日前、モダンアート ミユジアムへ行きましたら、エルンストの大展覧会の最後の日でした。運よく、エルンストの作品をまとめて見る事が出来ました。今度は、フューチュリズムの展覧会が五月二十九日からあるそうです。写眞の三脚などを船に積んでしまいましたので、船がつくまでは、手持で取らなくてはならづ 少々不自由しております。
川端先生は、マンハッタンのスタジオはそのまゝで もう一けんブルックリンハイツに家をかりました。僕は、家がみつかるまで先生のお宅へいそうろうしております。
ちょっと歩くと、港が目の前にあり、下がハイウェイ。古いレンガのくづれかゝった家があり、テネシー ウィリアムズそのまゝです。先生の家は、落着いた住宅街で、マンハッタンのど眞中のアトリエとは、正反対です。
まだこちらへ来て日が浅いですが、かねがね見たいと思っていた作品を始め、アメリカの現代作家の、馬鹿みたいに太腹な作品、アメリカの馬鹿げた廣さ等 少々、とまどっています。今のところ、まだ なにがなんだかわからないまゝ、日々がすぎて行きます。
では又、御手紙いたします。
川端先生、奥様より、くれぐれもよろしく御傳へ下さいとの事です。御後ともなに分よろしくお願いいたします。敬具
近藤竜男
川端先生のミラノの個展が五月二十日からですので、ギャラリー アポリネールとベティー パーソン ギャラリーと、同時期に始まる事になります。