Oct 3. 1979.

1979.10.3

山崎省三様
 こゝ数日、急に秋めいた日差となって肌寒く、なにやら薄ら淋しい気分にさせられますが、ニューヨークの美術界は先週よりシーズン・オープン。ニューヨーク大学内のグレー ギャラリーで開かれている「80年のアメリカ絵画」展(バーバラ・ロスのオルガナイズ)が話題を呼んでいます。
 この展覧会、年齢層は40歳代から20歳代までと幅廣いのですが、無名作家が約2/3、他の作家も70年代後半より関心が持たれ始めた作家達です。「〇〇アート」といった形式をもたない彼等は、イメージやアクションの世界を自由に展開し、その作品はめいめい千差万別、会場は雑然とした印象を受けますが、ミニマル・アートへのリアクションとして、(あたりまえの事ですが)「表現」への積極的姿勢が目立ちます。しかし、実際には、ろくな作品がなく、20年ぐらい前に僕達が日本でやっていた様な仕事がちらほら見られたりで、不毛故の堂々巡りといった感じをまぬがれません。
 先日は 二井裕子さんが大変にお世話になり有難とうございました。ニューヨークへ帰ってから、大きなトラックにぶつかったとかで、片側ペッチャンコになったホンダのシビックで遊びに来ましたが、今秋はニューヨークで個展とか、芸新の新人欄で取り上げていたゞけたのが大変に嬉しくて、彼女のハンドバッグの中には、今も常に芸新の9月号が入っている様です。
 同封いたしました「志水楠男と作家たち」展のアナウンスメント、作家達が主体となって 8日より 旧南画廊の会場で開催することになりました。(「この展覧会は故人へのオマージュであり、私たちの気持の一つの区切りになるようなものにしたいと思います」(宇佐美記)) 画廊自体はすでに展覧会を開く力はなく、この展覧会の後、いずが画廊は閉じる事になるそうです。
 出品作家一人二万円の経費負担、賣れた作品は画廊に寄付するというものです。このことは表沙汰にはしていないとのことですが。
 僕はドローイング一点と小品一点の出品、いずれも個展を予定して制作した「ブルー・ペインティング」シリーズのための習作です。個展のはずが、こんな小っちゃな発表になってしまいましたが、近作の内容の一端はわかっていたゞけるかと思います。展覧会お越しの折は、僕の作品も是非見て下さい。オリジナル作品は二点とも約4.5mの長さです。
 アナウンスメントが少なく、一枚しか同封出来ませんが、芸新の皆様にくれぐれもよろしくお伝へ下さいませ。斉藤様、野田さんには別便にてお送りいたしました。
近藤竜男

手紙, Oct 3. 1979., 1979.10.3手紙, Oct 3. 1979., 1979.10.3
Tatsuo Kondo CV
Digital Archive