Jan 24. 1976.
1976.1.24
山崎省三様
芸新の皆様 良いお年をお迎えになったことゝお察しいたします。本年もよろしくお願い申し上げます。
昨日のニューヨークは40年振りの寒さとか、不況の中での極寒は身にこたえます。表向きのアメリカは景気向上と言いますが、ニューヨークの実生活には、かけら程も上向きの方向は見られず、商品の質の低下、倒産、閉店、失業、と言った事々が、身近なところで続いています。ニューヨーク市の公共への出資縮小は、大幅なパブリック スクールや図書館の閉鎖へと向うようで、この15年でのニューヨークの低落振りは、ちょっと考へられない程です。Sohoの画廊だけが、やたらと増えて週末は どっと人がおしかける奇妙な賑わいを見せています。そう言えば、63、4年頃 マジソン アベニューの69Stあたりに多数の画廊がオープンし、(日本橋画廊も)、2年程で皆消えて行きましたが Sohoは今後どのようになりますか?
先日 芸新 1年分お送り下さり本当に有難うございました。これは、レジストレイド メールで来ましたので、郵便局へ取りに来るように、との指示の紙が入っていました(留守にしていましたので)。ところが局へ行って見ると、どこにも見あたりません。2組のレジストレート メールが2つとも見つからないので 始め局でも不思議がっていましたが、明日来いとのこと、その後局へ行ってもいっこうに見つからず、局では とぼけ始める態度、今までの事もあり、どうしても こゝの所ではっきりしなければいけないと思い 紛失届を提出すると共に、友人の弁護士と一緒に局へ行きました。その時も結局見つかりませんでしたが、不思議な事に、数時間後、土曜日で半どんなのに 若いメールマンが僕のところへ2組の芸新を届けて来ました(この時始めて、このレジストレート メールが芸新だと知りました)。彼に今までの事も一緒に問詰めましたが、自分は知らないの一点張りで そゝくさと逃げてしまいました。
この一年間 日本から何が送られて来て何が紛失しているのか良くわからず、一応 本などをお送りいたゞいている所へ問い合せて見ましたところ、美術出版から送った原稿用紙その他のパケージ類、斎藤さんが お送り下さっている事になっている小説新潮全部(一册だけ着きました)、芸術新潮全部(前に着かぬむねお手紙いたしました時、2月と3月だけ来ました)が、届いていない事がわかりました。昨年 草野さんと電話でお話しした時、どこかにファンが居るのでしょうかと冗談を言ってらっしゃいましたが もしかしたら、これは本当かも知れませんね。僕達のビルの中でなくなると言ふ事は、どうしても考へられないのですが。—— 日本の出版社からボール紙の、オフィシャルなバックをして来るものが、皆 なくなるのが不思議です。
先日、局にそれらの事情を届け出、僕達のビルディングの郵便受を 一番大きいサイズのものに取り替えました。これでだめならもう、どうしようもありませんが、今年の入ってから、美術出版で送りなおした原稿用紙、斎藤さんがエアメールで送って下さった小説新潮(今まで船便)とも、不事着きましたので、今月末、芸新が無事着けば 正常にもどる事になります。なにか 本当に御迷惑をお掛けしてしまい申訳ありませんでしたが、おそらく、芸新、小説新潮とも、こちらの局へ着いてから なんらかの事情により紛失しているのだと思います。こう言ふ事は疑問に思い出すと疑心暗鬼、今度のレジストレード メールのカードを入手するまでは、なにがどうなっているのか 証拠が無いだけにどうしようもありませんでした。こちらへもどってから、まだ原稿用紙いたゞいておりませんので、手元になく、今度は着くと思いますのでお送り頂ければ幸です。
マルボロ ギャラリーの問題は、一昨日 お送りした分でおそらく終りだと思います。マルボロは相変らず平常に開いておりますが、こゝのところ写眞の展覧会が多いようで、アベドンのポートレートの展覧会は 大変な反響がありました。今は、Berenice Abbottの写眞展をやっています。
ニューヨークの電話局から、10月17日の国際電話について何か問い合せがありましたか? これは、コレクトコールで草野さんとパーク バーネットの件についてお話しした分が 僕の方へチャージされて来た事についてゞ、数日前、ニューヨーク テレフォンから連絡がありました。(僕が拂った分はクレジットとなり、この問題は解決しました)
ベン ヘラーは いまだに内装が終らず、もう少し日々が掛るようです。日々がのびるので 訪問する前にコレクションの内容について予備知識を得たいと思い、カタログなど、何か資料がないかとたのんで見ましたが、今はないようです。同封の手紙の文面では 山崎さんがいらした時より スケールが小さくなっているのではないかとも思われますが、—— すでに何度も連絡しておりますので、いずれにしても 2月に入ってから、行って見ます。今は ベン ヘラー氏は カリフォルニアへ行っていて ちょくせつ話せませんでした。
では、又、お手紙いたします。
マイヨールの展覧会は僕にとっては、大変つまらなく思へました。
近藤竜男