Nov. 24. 1970.

1970.11.24

イサムノグチと猪熊弦一郎の個展
 ニューヨークのウィラード(Willard)ギャラリーにおいて、10月13日より11月14日までの1ヶ月、猪熊弦一郎の個展が開かれた。こゝ数年間にわたり追究しているテーマの発展と、より色彩的な強さを増した10点近い大作、それにガッシュの小品をまじえた新作によって、その後の発展を知る事が出来る。又一方、ニューヨークのコーディエル アンド エクストローム(Cordier & Ekstrom)ギャラリーで開かれているイサム ノグチの新作による個展が、反響を呼んでいる。野外におけるモニュメンタルな作品、あるいはちょうちんの新作、と言った外部の生活と常に関り合いをもつ作品以外は、こゝ数年彼の制作は石に集中されている。今度の新作はイタリヤで作られたもので、種類の違う石をつなぎ合わせて作られており、その突詰められ、磨き上げられた、形体と石肌は、デコラチーフなものに落ち入りやすいギリギリのところで見事に美しい彫刻へと転化されている。その優れた技術と素材への深い理解は、もはや、本当の意味での「彫刻家」がいなくなりつゝあるアメリカにおいて、あたかも現代美術批判とでも言った感じすらあたえるのである。

山崎省三様
Nov. 24. 1970.
 お手紙有難うございました。先日は、うちのがお忙しいところお邪魔し失礼いたしました。
 おやじが病気で ちょっと容態がどう変るか分からなく今のところ落着かないようですが、そのうち、マージャンをやりたいなどというわがまゝを言い出すかも知れません。そのせつは、お許しの程、万が一、お時間がありました折には、よろしくお願いいたします。
ミユジアムでの展覧会では先月お送りした分がほとんど皆今年一杯続きますので、今月は、あまりめぼしい現代美術の展覧会はありません。
 「原爆の図」をニュースクールの画廊でやっているのですが、あまり見に行く気がせず、そのまゝになっています(12月15日まで)。これは、この前カルチャーセンターでやった原爆の写眞展が強烈だったので 反響がマイナスに出るようです。
 今月は石川勇さんが7年ぶりでニューヨークを引上げると言ふので送別会をやったりしましたが、その後なかなかみこしが上らず 2日目、3日目の送別会が続き のみ疲れとなりました。一人でいると文句を言ふ奴がいないので ついのみ過ぎとなるようです。
 後一週間でグッゲンハイムのオープニングですが、どんなふうに見える事やら、——

手紙, Nov. 24. 1970., 1970.11.24手紙, Nov. 24. 1970., 1970.11.24手紙, Nov. 24. 1970., 1970.11.24
Tatsuo Kondo CV
Digital Archive