六月二十六日
1970.6.26
山崎省三様
原稿おそくなって申訳ありません、今月はまったく面白い展覧会がありません。ジューシ ミユジアムで壁の展覧会をやっておりますが、今週中に行くチャンスがありませんでした。お送りしたPhotography into Sculptureもつまらない展覧会です。
むしろ、近代美術館でやっている日本映画祭の方が面白いと言えましょう。黒沢、溝口は別として、小津、成瀬への関心が、アメリカ人の中でも徐々に高まっているようです。リッチさんの選考ですから、川島雄三や今村昌平は入っていないようです。昨日「あかね雲」(篠田正浩)を見ました。見おわったらへとへとにつかれましたが、篠田というディレクターについてもう一度考へなおして見るチャンスにもなりました(ニューヨークでも他のフィルムを見るチャンスはときどきあります)。
河原温さんの作品、あの人がこゝまで変ぼおしたと言った点でも興味がありましたが、今度開かれる近代美術館でのコンセプチュアルアートの展覧会にも、ディレクターが、温さんがドイツへ送ったハガキを、さがして来て、展示するそうです。温さんには、良く会うのですが、僕も、コンセプチュアルアートと言ふのは本当は良くわかりません。温さんも僕も同じ世代ですから、アンパンの時点から現在までへの温さんの変ぼうと、現在のコンセプチュアル アーティストとしての温さんの立場を、つっこんで見ると、ある意味でコンセプトアートと言ふのが、日本人にわかりやすく浮彫られるのではないか、などと思います。
先日、斎藤様よりお手紙いたゞきました。テイボーの、モーツァルト、六番のコンチェルト、ですが、ちょっと、見つかりません。レコード番号をお伺いしましたが、ご返事をまっております。
六月二十六日
近藤竜男
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