Sep 23. 1968.
1968.9.23
山崎さんへ
お手紙、有難うございました。
九月の半ばも過ぎれば、かなり、活発な動きが見られるはづのニューヨークも、先シーズンと同じく、オープンしたギャラリーも半分ほど、それも とくに目立った新人が発表しているのでもなく、とりあえづ 画廊の作家によるグループショーと言ったところです。10月に入ってから、新しいなにか、が現われるのではないか と言ふ きたいはありますが、なにか、期待よりは倦怠感のようなものが、先に来てしまいます。
画廊のシスティムに対して、自分達で展覧会を開こうと言ふ オフ ギャラリーの動きが、ダウンタウンを中心にかなり活発になって来たようです。さっそく、ロフトを改造した貸ミユジアム などと言ふのも現われはじめ、来月そうそうには、日本人の若い人達、数人のグループも、ロフトショーを開きます。
これらの動きが、なにを生み、どのような結果をもたらすかは、大変興味がありますが、現在の画廊システィムえの、アンチテーゼとして、前向きのオフ ギャラリーであれば、面白いのですが、「せまい門」に対するあせりと言ふか、たゞ「どんどん見せよう」と言ふだけの事なのであれば、あまり 多くは期待出来ないような気もします。日本の貸画廊での展覧会を、連想させます。
アンダー グランドが、さかんだ と言っても それが質的にどうかと言ふ事になると ポピュラーになって来た分だけ マイナスになった面も多いように思うのですが、(映画など)——と言ふよりは、つまらないものが、はんらんしだし、良いものが、みつけにくゝなって来ているのかも知れません。
ミユジアムでは、これと言った展覧会も見当たりません。グッゲンハイム ミユジアムでは、ペルーの工芸品の大展覧会を開いています。完全に全館を一つの展覧会に使ったのもめづらしく、コンテンポラリーの作品による企画を まったくはぶいてしまった事は異例です。(たいていは古いものゝ展覧会の時は一番上か、一階を ほかの企画によるコンテンポラリーの展覧会として、2つを平行させていました) 写眞をとって来ましたが ぼう大なコレクションです。プレ コロンビアについては、僕は無知ですので、原稿として写真と、インフォメーションを同封いたします。(まだ、カタログは出来ていません)
会場に並べられた壺等のうち、いくつかの主だった作品の図柄を、うしろの壁にコッピーしてあるのが親切だと思いました。(あまり良いコッピーではありません) これがないと、会場が間の抜けたものになってしまふのかも知れません。
一昨日、ブリロ氏のところへ行って来ました。ブルックリンの家を賣るのだそうで、コレクションは、みな倉庫の中にしまったり、ミユジアムに寄贈したりしたのだそうで、殺風景な室内となっていました。彼氏、日本にはかなり色気があるので大変嬉しい様子。ワーホールの牛と鎧とを並べてくれました。鎧のほか、刀のコレクションもしています。これらは 商売ではなく、自分のためのコレクションなのだと言っていました。刀については「くわしくは知らないのだが、好きなものは好きなので「銘」などには、あまり、こだわらないのだ」と言ふような事を言ってましたが、やおら、その一本を取って鞘から抜きはなった姿は、日本のガキ大將が、こっそり持出した刀を見せびらかしているようなかっこう。イタリヤンの彼氏、やはり、刃物は好きなようです。
作品だけのものと、ブリロ氏に入ってもらったものと、とって見ました。
藤枝さんは東京ですか、関西ですか? 住所がきまったら、連絡下さるよう、お傳へ下さいませ。
タダスキーさん、ドイツでバス型のワーゲンを買って元気で歸って来ました。何か、人生悟ったような事を言っています。敬具
近藤竜男