Aug 24 1975

1975.8.24

山崎省三様
 先日 建畠さんよりお電話頂きました パッカード コレクションに関する件、今日(24日)のニューヨーク タイムスに記載されておりますのでお送りいたします。
 これはニューヨーク タイムスの一面に記載されたものですので アートセクションで今後取上げられる可能性もあると思います。(ケネディーあたりが何か書くのではないか?) 今後、パッカード コレクションに関する記事が出ましたら 追ってお送りいたします。
 ワールドスナップ原稿と、フィリップ コレクションの取材費、遅くなってしまい申訳ありません。明日 送りいたします。
 ニューヨークに長く住んでいた友人の画家(女)が自殺し、こゝのところ その後始末に追われています。
 菊の花ばかりを長年描き続けて来た狭いアトリエは、多数の作品に埋れて、テーブル一ツにベッドだけの調度品、—— あまりに絵だけに一筋過ぎた48年間の一生が 痛々しくて正視出来ません。こゝ数年 精神にやゝ異常を来し ニューヨーク ホスピタル(ポロックなどが入院していた病院)へ通っていましたが、左手首を深く切り、胸、腹等を多数——腎臓へ達する程深く突刺したと言ふ凄まじい自殺でした。僕は勤が一緒で毎週3回は彼女に会っていましたので 今は、まったくやりきれない気持です。死んだ時は 一番新しい作品(白一色)は まだぬれていたそうです。
 昨年は脇田君の奥さんのアヤ子さんが、今年は井出さんと、親しい人の自殺が続き、女の1人暮しを耐えるには ニューヨークと言ふ街は、あまりに非情過ぎるように感じられます。そのうち、友人達で彼女の回顧展をしてあげようと計画し、作品は僕の所であづかる事にしましたが、死んでからでは、なにもならないむなしさが 皆の心を痛めます。
近藤竜男

手紙, Aug 24 1975, 1975.8.24手紙, Aug 24 1975, 1975.8.24手紙, Aug 24 1975, 1975.8.24
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