Jun 14. 1972.

1972.6.14

山崎省三様
 お手紙有難うございました。
 メトロポリタンさっそく行って見ましたが、展覧会自体は大きなものではなく、会場の中心にパネル写眞(非常にコントラストが強く ゼロックスの複写だと思います)を、組合せて立体的に構成しています。字が写眞の中に入っているものが多く、又、ガラスに入っていますので、撮影、複写するのは少々無理のように思いました。ちょうど カタログを売っており、写眞の状態が可成良いので、むしろ、こちらから、とられた方が良いと思い、一部求めました。カタログは、この手紙と一緒にお送りいたしました。一部6$で領収書をくれませんでしたが、これは、The Italian Art & Landscape. Foundation へ寄附した事になるのだそうです。
 会場写眞をとりましたので同封いたします。ワールドスナップには、この分は 横着して書きませんでしたが、この写眞の中から使って下さいませ。
 ダンカンの写眞展がホイットニーで今日から、開かれますが、これは来月の分にいたします。
 イタリヤの家具デザイン展は、何んだか、少々ハッタリくさくてあまり好きになれませんでした。こゝ数年、ミユジアムの大きな企画はほとんど、スポンサー付となりましたが、今度の近美の展覧会は、まるでイタリヤの宣伝のような感じを受けます。
 そう言えば メトロポリタンのlandscape of Italy展でも、別の意味でのイタリヤの宣伝とも、受取れますが、——
 タントラの本、意外に少ないのに驚ろきました。入手出来たのは、Tantra Asana(Ajit Mookenjeeの二册目、英語版、これは大変重いので船便で送りいたします)と、昨年 Santa Barbara Museumでやったタントラ展のカタログ、(小さなものです)だけ。昨年 英國の何んとか言ふ画廊で開かれたタントラの大展覧会のカタログが 大変良いのだそうですが、現在は全部売切れで、今度 本として出るそうです。入手出来るのは、数ヶ月先になるだろうとの事でしたが、一応たのんでおきました。今のところ、ウイッテンボンだけ聞きましたので、今度よその本屋も探して見ます。
 ニューヨークもギャラリー グループ ショーが今月終ると、シーズンオフです。今年程 色々な人が日本から見えた年もありませんでした。先週は久しぶりに志水さんにお会出来ました。来年、南画廊で個展が実現出来ればと願っています。
 イスラエルでのテロ事件は、ニューヨークの在住日本人を震え上らせています。なにしろ、プエルトリカンの多いニューヨークの事、聞かれても日本人と言ふな、と言った空気で、日航のバックや茶封筒でも、ジャパンと書いてあるものは、もちあるくと、危ないのではないかと言った気持にさせられます。自分の國籍を隠さないと危険だと言った実感をもつのは始めての体験で、恥と言ったような事よりも、現実的な、驚怖が先に来ます。
 では又、お手紙いたします。
近藤竜男

手紙, Jun 14. 1972., 1972.6.14手紙, Jun 14. 1972., 1972.6.14手紙, Jun 14. 1972., 1972.6.14手紙, Jun 14. 1972., 1972.6.14

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