Aug 25. 1965.

1965.8.25

山崎省三様
 大変ごぶさたいたしました。
 暑かった夏もこゝ二三日、だいぶしのぎ良くなりました。
 池田さんの展覧会は、ミユジアムを入ってすぐ左側のプリントのための小さな部屋でやっています。皆「なんだこんな小さな展覧会か」と言いますが、絵ではなく、プリントと言ふ事を考へれば、やはり、30才前後の若い作家が一部屋与えられて ミユジアム モダンアートで個展を開くと言ふ事は大変な事だと思います。画家のプリント作品の方がプリント作家の作品よりも高く(値段の上でも)評価されがちな現状で プリント作家が独立して個展を開く事は めったに得られる事のないチャンスだと思います。シーズンオフと言ふ事もむしろプラスしていると思います。
 僕は特に好きと言ふわけではありませんが、どこえもって行っても通用する作品ですね。写眞とインフォメーション等同封いたしますが、日本では、もうトピックとしての新しさはないのでしょうね。
 ローゼンクイストがこの前、スタヂオで山崎さんと一緒に見た作品をジューシ ミユジアムにならべています。レオ キャステリーの個展に並べたものを、もっと廣いスペースにおいただけのもので、トピックとしての面白味はないと思いますが、一応同封いたします。どこへ並べて見ても飛行機のかっこうがはっきり見えるぐらいのもので あれはあれだけのものです。
 オルデンバークやジム ダイン。このローゼンクイストにしても なんらかの意味あるいは作品らしさ、を作品の中へ持込まざるを得なくなったらしい、と言ふ事は、作家には内外のいかなる理由があるにせよ僕にはやはり後退としか見えませんが。——
 タダスキー氏はクーツ ギャラリーがなかなか力を入れているようで、九月そうそうに又個展を開くとの事で 張切って量産にはげんでいます。もはや、大金持に近づきつゝあるようです。
 日本の近代美術館の展覧会の作品は先日もって行きましたが 大きすぎるのでばらばらのまゝで送りました。日本でうまくつながるか少々心配です。
 先日、ドクター ギブソンと言ふコレクター(ワシントンDCに住んでいるコレクターで日本人のコレクションをしている人)が作品を一点買ってくれました。近く、ニューイングランドの大学などを廻る巡回展を開くそうで(ニューヨークに住む日本人作家展) 桑山夫婦、楠本君、木村さん等 10人ぐらいの展覧会となるようで、僕も出す事になりました。

手紙, Aug 25. 1965., 1965.8.25手紙, Aug 25. 1965., 1965.8.25
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