作品

空爆の残像

1954年-1961年4月

近藤竜男は東京藝大在学中の1954年9月、名古屋の丸善で開いた ”エポック アール展” で世に出た。川端実を慕う同志のグループ展。この時代の近藤は川端の影響を受けながら独自の思考による絵を追求した。12歳、太平洋戦争終戦の頃の体験が基になっている。毎日のように中島飛行機工場へ吸込まれて行く爆弾を見ようと口をあけたB29の弾倉を見つめ、焼野原の東京や、死体を山ほど積んだトラックが何台も走つて行つた事、それらは恐ろしいと言うよりは以前に見た映画の印象的なシーンだけが今でも頭の中に焼きついていると言つた感じであり、爆弾の穴埋めや中島飛行機工場での残品整理に明け暮れ、、に集約される体験である。近藤は記した。本質的にはグロテスクな現実、それを持つ明るい形で、あまりパトスによりかゝり過ぎないように表現して、尚、その本質が画面の上に出て来ればと思つている。澄切つた青空がより無気味に見えるような。と。

Tatsuo Kondo CV
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