8月5日(1961年)

1961.8.5

前略
 先日は、御手紙有難うございました。又 東京の家の方へ御送金いたゞきまして、感謝いたしております。
 写眞、大変、遅れてしまいましたが 今からでもまに合うでしょうか?
 グッゲンハイムのトンプソン コレクション、モダンアート ミユジアムのフューチュリズム、それに、モダンジャズのニュースにジョン コルトレーンの写眞を同封いたします。どうもおそくなって申訳ございません。ジャズの方、もう少し別な人も取りたかったのですが、フラッシュがたけない上に大変暗いので なかなか思ふように取れません。コルトレーンの写眞は 良くとれた方だと一人で満足しています。
 ジョン コルトレーンの人気は大変なもので、モダンジャズ界でもおそらくトップではないかと思います。人気があるだけあって、内容的にも大変素晴しいものでした。モダンジャズで ファンキージャズと言われていたものが、今年あたり、その良い面を保ちながら 内容的なものに目を向けて行くような動き。それが かなり、はっきりした形ちであらわれ始めて来たような気がしました。
 JAZZの話ばかりで恐縮ですが アート ブレーキー、MJQでも キタナイ所でやっていて、人気のある人は その時たしかに内容的にも充実しているし、有名な人でも非常に入の少ない時もあります。ファンが「実力」に対して、非常に敏感だと言ふ事を感じました。有名人の名をかりて、あまえている隙は無いようです。客がいなくても一生懸命やっているし、なにかニューヨークのキビシサを感じました。絵の世界でも同じ事だと思います。
 日本のように 有名人がすぐ芸能人化してしまうような、あまやかされる環境は、ないようです。ニューヨークはあまりに有名人が多すぎるようです。
 では又、資料がありましたら御送りいたします。暑さの折、くれぐれもお体をお大切に。敬具

手紙, 8月5日(1961年), 1961.8.5

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