5月21日(1964年)

1964.5.21

前略
 十九日、お手紙受取りました。
 さっそく、しらべているのですが、どうも誠に自信がありません。あいにくと、グッゲンハイム美術館には、知合の人もいませんので、結局、うわさていどの事しかわからないのではないかと心配しています。グッゲンハイムに直接に聞いて見ても、知らない人では、カタログと同じ事しか言わないと思います。グッゲンハイムの前向の姿勢と言ふ事は今でも同じで むしろ、今度の事も、カンヂンスキーを賣って、新らしい作品をもっと買うと言ふ事のようです。
 それにしても グッゲンハイムの関係者の中には反対意見も強かった事だろうし、何かはっきりした目的があるのではないかと思ふのですが、どうもわかりません。だいたい、この話を聞くのは始めてだと言ふ人が多く、知っていてもあまり内部事情まではわからないようです。これが逆に グッゲンハイムで新人の作品を五十点買ふと言ふ話だったら、それこそ一週間もたゝない内に大さわぎになるのでしょうが・・・ 絵かきは、どうもこの話には、それほどの関心を示さないようです、現金なものです。
 実は この話を僕はだいぶ前にだれかに聞いた事があるのですが すっかり忘れており、今、だれだったのかどうしても思い出せません。あの頃この事を知っていた人なら、内部事情にくわしい人だったろうと思ふのですが・・・
 ミユージアム モダンアートの人に聞きましたところ、あまりくわしくは知らないが、六月号のアートニュースがこの問題を取上げるはづだとの事で、さっそく問合せましたが内容についても本を見てくれとの事で、出る事はたしかです。来週中には手に入れられると思いますが、どうも日々がさしせまっています。あまりいゝかげんな事を書いてしまって、アートニュースで先に「眞相」が出てしまったのでは、ちょっと具合が悪いので、やはり、一応讀んでから書くべきだと思ふのですが。三十日を二三日遅れてはやはりまづいですか?
 今の、グッゲンハイムのキューレターのアローエが大変力をもっていると思ふのですが、彼はイギリスのパップアートと、パリでのローシェンバーク、ジャスパー ジョーンズ等を書いて一やく有名になった批評家とか? グッゲンハイムから呼ばれて、ロンドンから来たわけで、この前のグッゲンハイムのポップアートのショーでは 全館をつかってやる企画だったのだそうですが内部の反対で、トップフロワーだけの小さいショーになったのだそうです。フランシス ベーコンの展覧会の事なども考へると、アローエと言ふ人は、グッゲンハイムの中でどのように動いているのか、ちょっと気になりますが せいかくな事はどうもわかりません。
 ニューヨークの作家は、ポップアートにはむしろ反対の態度を取っていますので、グッゲンハイムに対しての考へかたと言ふか、権威のようなものが少々ぐらついている感じです。「カンヂンスキーを賣るそうだ」と言ふと、「ぢゃあそれでポップアートを又買うのかな? づいぶんたくさん買えるぞ。」と言ふような事を皆冗談まぢりに言います。それにしてもポップアートとは変な生命力を持っていますね。作家からはなれて、パップアートが一人で歩きだしちゃったような感じです。
 荒川修作がジャニス ギャラリーの新人グループ展に出しています。これはなかなかな事だと思います。超一流のギャラリーですから。

手紙, 5月21日(1964年), 1964.5.21手紙, 5月21日(1964年), 1964.5.21
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